第23回高校生ものづくりコンテスト測量部門全国大会の視察を終えて

東京都立葛西工科高等学校 東 君康

 課題改訂後の全国大会にお邪魔してから久しぶりに全国大会を視察させて頂いた。天気は曇り、やや肌寒い気候のなかで生徒の静かな戦いは始まった。外業では視準者一人の力量が結果に大きく影響し、内業では三人で計算書を仕上げる異様な光景が見られた方式から、参加する生徒一人一人の普段の力が試される形に変えてから、久しぶりの視察であった。この数年、生徒の力は格段の向上が見られ、プロの方も目を見張る精度を算出してくるなど、一定の目的は達してきたと感じている。その一方で、採点の軸を減点方式から加点方式にしたために、採点作業や審査に多くのご負担を強いたことも事実である。また、たとえば計算書における加点が計算過程の信ぴょう性の有無によって、審査側の判断が大会によって違いがみられるなど、指導者側と審査側の認識の違いが浮き彫りになっていることも明らかになっている。

当日、指導されている先生や選手からさまざまな言葉を聞くことができた。「指導が一定程度やりやすくなった」、「授業に応じた内容に近いのでありがたい」などの指導者の言葉や参加した生徒からは、「それぞれがスキルアップできるのでうれしい」、「互いに励まして取り組むことができるので一体感が生まれる」などのうれしい言葉もあった。同時に、「内業の張りつめた緊張感で押しつぶされそうになった」などの苦しい胸の内も明かしてくれた。なかには、内業後にチーム内での確認した結果なのであろうか、涙がこぼれ落ちて止まらない女子生徒の姿もあった。

帰途につきながら、多くの指導者、参加生徒がこれほどまでにひたむきに、熱く、そして前向きに取り組まれていることにとても重責を感じた。もちろん、課題や内容改訂そのものを私一人がおこなっているわけではない。技量向上を目指し、よりよい大会にし、生徒の頑張りをきちんと評価するために、多くの時間を割いてきた。指導者からの厳しい叱咤、激励の言葉は現在も届いている。そのたびごとに、指導者の情熱と生徒の努力、運営側の支え、このトライアングルをどのように融合させるか。回を重ねれば重ねるほど、その苦労に応えなければと心に刻んでいる。ただ、万分の一で示される閉合比は、その精度がものづくりに反映されることはいうまでもないが、言い方を変えれば、安全を脅かすようなトラブルを回避するために算出しているともいえる。運営側、指導者側、参加者生徒それぞれの思いは受け止めなければならないが、大会趣旨を共有することも重要なことなのではないだろうか。各地区の代表という誇りをもち、指導者や参加者どうしがリスペクトできる構図をつくることが次の課題なのかもしれない。今回、運営に当たられた熊本県のある先生が、運営に尽力してくれた熊本県立熊本工業高校の生徒全員を会場の正面に集め、参加生徒全員と向き合い、互いに拍手をもって選手の健闘を称え、運営に対する感謝を示すことを促されたその光景は一生忘れることができない。地域の要請に応え、社会に貢献する生徒に鍛え、技術者へ育てていくことこそが私たちの使命であり、一人では決して構築できない土木の誇りと真髄ではないかと胸が熱くなった。

ものづくりコンテスト全国大会 競技結果

優 勝 川崎市立川崎総合科学高等学校 建設工学科
第2位 熊本県立熊本工業高等学校 土木科
第3位 高知県立高知工業高等学校 土木科

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